山岡荘八「豊臣秀吉」の二巻を読み終えました。表紙のカバーはアホみたいな絵だけど中身は木下藤吉郎が汚らしい針売から厩番、足軽をこなし桶狭間の戦いの活躍を描かれている。その間での藤吉郎の失敗もいくつも書かれている。特に信長とその奥方お濃が藤吉郎をやりこめる場面では面白さがある。
汚い針売
清洲城下の蜂須賀家の縄張りに見かけない針売がいた。髪もボサボサアカだらけ。お寧々に出会い浅野家へ留まることになった。蜂須賀家の小六の弟又十郎、蜂須賀家の一若、織田の家来前田犬千代にも出会った。
織田へ士官
藤吉郎はなんとか織田へ奉公しようとする。山へ馬をのりに来ていた信長へ会いに行き、今川の動きやこれからの織田のやるべきことを伝える。それを聞いた信長は藤吉郎に面白い奴だと厩番をさせはじめる。藤吉郎は暴れ馬だと言われる信長の馬をうまくひくことができ、さらに信長に気に入られることになる。
お寧々が欲しい
針売していた頃に出会ったお寧々に恋をした藤吉郎はなんとか自分のものにしようとする。しかし、お寧々はすでに前田犬千代と許嫁の仲になろうとしていた。藤吉郎は前田犬千代に宛名不明の恋文を代筆してもらい、それをお寧々の目に触れさせた。賢いお寧々はその手紙が藤吉郎が書かせたものだとわかったが、前田犬千代を大した人物ではないと思う。
VS今川義元に向けて
織田信長が今川義元との決戦が近いとわかっていた。今川義元が上洛すれば自然と尾張を通るからだ。今川義元の兵は織田の何倍もある。それを補うために信長がいざ戦をはじめた時に一緒に戦う兵を集めねばならない。しかし、その兵集めも今川に悟られてしまうと相手に身構えられてしまう。相手に悟られないように兵を集めることができれば織田の勝利もありうる。その世の野武士たちを集める役を藤吉郎が手を挙げたのだ。藤吉郎はいそいそと国中へ味噌を買いに歩いた。草履取りから御台所奉行に昇進である。しかし、周りの連中は「また味噌を買いに言ってるぞ。あんなに味噌ばかり買ってもしょうがないだろうに」と味方すらも藤吉郎の行動の本当の意味を理解できていなかった。そして、見事この戦が勝つことができればお寧々と藤吉郎はくっつくという話も出ていた。
前田犬千代のあやまち
お寧々が藤吉郎に頼まれ荷物を持って約束の場所に来てみると、夜の闇に紛れて森を進む男がいた。その男の背には女がおぶさっていた。そこに藤吉郎が現れ、「はやく逃げろ。こうなってはしかたがない」と焦っている様子。3人ともお寧々には気付かず走り去っていった。お寧々は不思議がりながら戻っている時になにかにつまずいた。それは死体であった。しかもその死体は信長のお気に入りである愛知十阿弥(あいちじゅうあみ)だった。愛知十阿弥を殺したのは前田犬千代だったが、それは本心ではなかった。普段から仲が悪かった二人は喧嘩をしたフリをしてそのまま喧嘩別れをする予定であったが、愛知十阿弥があまりにも前田犬千代を馬鹿にしたような言動をするので前田犬千代はフリを超えて本当に怒り、殺してしまったのだ。これが信長に知れたら前田犬千代は殺されてしまう。今すぐに知らせると確実に首切りだが、時間が経てば解決するだろうと逃げたのだ。
信長うつけになる
いよいよ今川が動き出すんじゃないかとみなが思いはじめた時期になったが、信長は気が狂ってしまったらしい。本当ならば家来達と戦の作戦を話あったりしなければならないが、当の信長が城にいないのだ。なんと村々の祭りに出かけていき、踊り明かしているというのだ。家来達やお寧々、奥方のお濃までが心配するようになった。しかし、これも全部作戦で祭りの中で野武士を集めたり話あっていたりしたのだ。蜂須賀小六も祭りで信長と初対面している。
暑苦しい!
「いよいよ今川吉本が岡崎城へ入ったか」といかめしい武装した重臣達が嘆いていた。重臣たちの不安は自分の殿のうつけさにあった。今川義元がもう目と鼻の先にきているというのにまた殿は踊りに出ている。もはや織田家もこれまでか。重臣たちからは溜息がもれる。駿河から今川義元の様子を見てきた重臣はその行列の豪華さに驚いたことを伝えた。そしてその話の矛先は藤吉郎へ向けられる。「悪いのはあの猿だ。日夜殿を連れ出していく。もしかしたら今川方の刺客かもしれないぞ」と証拠もないことを話し合っている。そこに「誰だ!大太鼓を叩かせたのは!」と信長が叫びながら現れた。「やめさせろ!しかもその武装はなんだ暑苦しい!戦の前に疲れてしまうわ」と奥へ入っていった。
いよいよ迫る
清州城へ救援の要請が来はじめた。国境を警備する5つの砦が攻められているのだ。しかし信長はまだ動かない。動かない上に酒宴を開いている。家来達もお手上げだった。藤吉郎も昼寝をしたりして過ごしていた。
桶狭間の戦い
午前2時藤吉郎のもとに今川義元の宿所が決まったとの報告が入った。藤吉郎はすぐに信長に知らせにいった。信長はお濃を呼び出発の準備をさせた。あっという間に具足をつけ、飯、神酒、勝栗を食した。最後に盃を飲み、藤吉郎とともに出発した。あまりにも急な出発だったので家来達はほとんど付いてこれない。熱田神宮へ勝利を祈りにいくが、このときたった5騎しかいなかった。いずれ兵は集まりはじめた。そしていよいよ決戦のときだ。織田軍は雷雨にまぎれて今川義元めがけて攻撃を仕掛けた。兵の数ではまるっきり歯が立たない織田軍のすべてをかけた奇襲だ。
戦のあとの戦い
見事勝利を勝ち取った織田軍。藤吉郎も出世間違いなし。ところが藤吉郎は問題をかかえる。以前信長に勘当された前田犬千代を城に運びこんだのだ。前田犬千代は全身に大怪我を負ってしまった。前田犬千代は信長に勘当されたことをなんとか挽回しようと最前線で命をかけて戦ったのだ。藤吉郎は前田犬千代を許してもらおうと城に連れてきたのだが、まだ生きているのにもかかわらず信長には死体だと言って説明をする。しかし信長にばれてしまい、前田犬千代とともに勘当されてしまった。後日信長に呼び出された藤吉郎は多弁を注意されタジタジになる。勘当する代わりに新しい仕事与えられる。台所奉行、薪炭奉行、山林奉行を命じられる。ついでにお寧々にもおしゃべりを叱られムズムズする藤吉郎であった。後日藤吉郎とお寧々は結婚することになる。今川義元の次は美濃の斎藤義龍が目標だ。戦に備えるためには清州城の壊れた石垣を直したいところだが、なかなか工事が進まない。何ヶ月かかっても終わらない工事を藤吉郎は10日でやってのけると言い放った。藤吉郎は銭百貫目を持ち出し人夫達に「はやく仕事をこなした今までの5倍。きれいにできたらさらに報酬を出す」と煽り出した。藤吉郎の腕の見せどころだ。
二巻目読み終わって
いよいよ藤吉郎が織田軍へ入り込んだ。上手くホラを吹きながらどんどん偉くなっていく。少し間違えば死ぬような行動もするが、それを恐れずにやってしまったのが藤吉郎の成功の鍵だろう。有名な桶狭間の戦いの人集めでも藤吉郎の口車にのせられた野武士がたくさんいたことだろう。結局信長も藤吉郎にのせられた一人にカウントしてもいいのかもしれない。ホラ吹きの藤吉郎も信長とお濃とお寧々にはかなわない。いつも一歩先をいかれてしまう。負けず嫌いの藤吉郎は立ち向かうがいつも敗退する。この清州城内の小さな戦もなかなか魅力的な部分だ。ちょっと笑ってしまったシーンが信長が桶狭間の戦いの前に熱田神宮で勝利祈願した部分。信長は鳥居の前で「せきはん!せきはん!」と叫ぶ。それを聞いて「殿の出陣だ!赤飯を炊け!」と赤飯を用意させるのだが、実はせきはんというのは祈願をしてくれる武井肥後入道夕菴(せきあん)を呼んだだけだったのだ。このシーンがあまりにもとぼけているので読んでいて笑ってしまったのだ。さて3巻はどんなシーンが出てくるか。
by まくたのさ